コラム
脱・根性論的コンディショニング【最終回】
〜アスリートのコンディショニング実態を解明せよ
〜環境に左右されない「江島流」の睡眠とは?〜
アスリートの睡眠への取り組みを紹介する本企画。その最後を飾るのは、パラ水泳の先駆者で、東京パラリンピックの出場を目指す江島大佑選手だ。アテネ・北京・ロンドンと3大会でパラリンピックに出場したベテランのパラリンピアンは、目前に迫る東京パラリンピックに向けて、どのようなコンディショニングを行なっているのか?
そこには世の中に溢れる情報に流されることのない「江島流」のこだわりがあった。
江島選手は現在東京パラリンピックへの出場を目指していますが、東京パラリンピックへ向けて、現在はどのような日常を送っていますか?
2020年は、新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、参加を予定していた大会は全て中止になるなど、思うように競技ができない1年でした。しかし、そのような中でも、現在まで東京パラリンピックという目標を見失うことなく、練習に取り組んでいます。コロナ禍で思うように競技ができない中、江島選手はどのような1日を過ごしていましたか?
毎日、8時〜9時の間に起床し、朝食を食べた後は、散歩をしたりゆっくり体を動かしたりしながら軽いトレーニングをします。夕方の17時から19時まで、プールでしっかりトレーニングを行い、20時ごろに帰宅して夕食を食べたあとは少しゆっくりし、お風呂に入ってから就寝するという生活でした。だいたい夜中の0時〜1時の間には寝るようにしていましたね。
その生活は、コロナ前と大きく変わりましたか?
いえ、大きく変わっていません。僕が行うことは、コロナ前も今も変わりませんし、習慣として体に染み付いているので、ルーティンのような感じで生活していたのかもしれませんね。
江島選手が東京パラリンピックに出場する頃には、35歳という年齢になっています。東京パラリンピックに向けて、コンディション面での変化は感じていますか?
もともと理論よりも感覚を重視しているのですが、コンディション面での変化は感じていません。特に新しい取り組みを行っていることもないのですが、これまで無意識に行ってきたことが、実は正しかったんだなと感じることは多々あります。
それはどのようなことでしょうか?
例えば、寝るときの姿勢です。私は普段から枕を使わず、右肩を枕がわりにして横向きになって寝るんです。フィジカルコーチには、「絶対にやめたほうがいい」と言われるのですが、私にとっては、この姿勢が心地よいため、今でもそのようにして寝ています。
なぜ枕を使わないのでしょうか?
正直なところ、自分でも明確な答えはないんですが、心地よいということと、どんな環境でも同じ姿勢で寝られるというメリットはあるのかもしれません。例えば、海外遠征に行くと、宿泊するホテルによって枕の高さが違います。特に欧米の枕は高いことが多く、いつもと同じような姿勢で寝ることができません。でも自分の肩を枕代わりにしていれば、日本でも海外でも同じ体制で寝られるので、あまり眠れなかったことはありません。その点では、大きなメリットになっているんじゃないかと思います。
海外でも力を発揮してきたこととも無関係ではなさそうですね。
そうかもしれませんね。海外で実力を発揮する上では、環境の変化に順応する必要がありますが、中でも睡眠はとても重要だと感じています。(時差が大きい)ヨーロッパやアメリカへの遠征に行くと、コンディション調整に苦労する人もいますが、僕は現地についたら必ずトレーニングをして、体を疲れさせ、現地時間に自分の体を合わせてから睡眠をとるようにしています。これを行うと、睡眠のリズムに悩まされることが少ないです。
体内時計の乱れをすぐに調整しているんですね。他にも取り組んでいることはありますか?
僕は昔から真っ暗にしないと眠れないので、寝室は特注の遮光カーテンを使い、真っ暗にして寝ることができるように環境を作っています。あとはスマホを機内モードにして、夜に起こされないようにすること、寝室の温度と湿度を調整していることくらいです。いずれも、心地よさを求めた結果で、それがなぜいいのかはよくわかりません(笑)。
感覚的でまさに「江島流」ですね。最後に、睡眠に関心を持つ読者の方に、アドバイスがあればお願いします。
いまは身の回りにたくさんの情報が溢れています。僕が枕を使わないこともそうなのですが、人に言われたことをそのまま鵜呑みにするのではなく、自分が良いと感じたことを取り入れると良いのではないでしょうか。
試合中写真 : 本人提供
瀬川泰祐プロフィール
株式会社カタル代表取締役。社会派のスポーツライターとして、東洋経済オンライン、ITメディア、OCEANS、スポルディーバなどで執筆中。アスリートライブ編集長、ファルカオフットボールクラブアドバイザー。最近の取材テーマは「Beyond Sports」。社会の接点からスポーツの価値を探る。興行ビジネス歴20年。http://segawa.kataru.jp
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