コラム
●西野精治著
●単行本(ソフトカバー): 251ページ
●出版社: サンマーク出版 (2017/2/27)
●発売日: 2017/2/27
vol.03 スタンフォード式最高の睡眠
1.人生の三分の一を変えれば、残りの三分の二も動き出す
「すでに覚醒中、あらゆる努力や工夫をし、パフォーマンスを上げようとしているかもしれない。でも、それは人生の三分の二の部分での努力だ。現状の仕事や生活に満足していないのであれば、手つかずの残りの三分の一を改善しよう。それが残りの三分の二にも良い影響をもたらすのであれば、まさにレバレッジの効果がある。」
その1/3こそが睡眠の質をあげることだと著者は言う。人生の1/3は寝ている時間だということは有名だが、この改善をどう習慣化していくか、について述べられていく。そして習慣にしてしまえば、さほど努力の必要がなく、誰でも、簡単にできることを紹介してくれる。
さらに一週間で考えたとき、毎日の睡眠を改善し、攻めの睡眠の質向上の手を打つことができればそのレバレッジに拍車がかかるだろう。
「朝起きてから眠るまでの行動習慣が最高の睡眠をつくり出し、最高の睡眠が最高のパフォーマンスをつくり出す。睡眠と覚醒は表裏一体。そもそも質の良い眠りができていないから睡眠の分断が起こり、睡眠の分断が原因で覚醒の分断が起こる。覚醒と睡眠は二つで一つだ」という著者の言葉は理にかなっている。
2.睡眠に課せられた役割
(1)脳と体に休息を与える
(2)記憶を整理して定着
(3)ホルモンバランスを調整
(4)免疫力を上げる
(5)脳の老廃物を取る
(1)~(5)の役割を果たす睡眠。その睡眠の最もやっかいなとことは「睡眠は誰とも共有できない個人的な体験」でありどれくらいの質だったのかが可視化が難しいことである。「眠い、もっと寝たいという感情は睡眠からあなたに発せられた「救難信号」なのだ…(中略)こと睡眠においては、睡眠に対する不満足が(寝つきが悪い、睡眠不足、疲れが取れない)普通となっているしまっている印象を受ける。
えてして「不幸なこと」だとはあまり認識がされていないようだ」
特に「みんな疲れているのは当たり前」のような雰囲気を感じることがある。
私が学生の時、お金がなかった時、真っ先に削ったのは食費と睡眠(バイト時間を増やす)だった。軽視されがちな睡眠の役割(睡眠でしか解決できないこと)について改めてその重要性を著者は説く。
3.最初の90分の質を上げる
寝入りの「最初の90分の質を高めれば、そのあとの質もあがる。ひいては昼間の生活も改善される。寝る時間がないなら、絶対に90分の質を下げてはいけない。最初の眠気のタイミングを絶対に逃してはいけない。眠くなったら、とにかく寝てしまわないと、その後、深い眠りは訪れず、いくら長く寝てもいい睡眠にはならない」と課題をシンプル化する。
人は眠りについてすぐに一晩のうちで一番深い眠り=深いノンレム睡眠をいかに深くするか、最初の90分にこだわる。その、最初の90分が「黄金」になるメリットは
(1)寝ているだけで、自律神経が整う
(2)グロースホルモンが分泌する
(3)脳のコンディションが良くなる
というもの。2で記載した睡眠の役割とリンクする。
4.「体温」と「脳」が眠りスイッチ
十分に最初の90分が重要であることを理解したのち、入眠についての項目に入っていく。
例えば「毎日同じ時間に就寝するというやり方はサーカディアンリズムに合っており、寝つきを良くして深く眠るのに効果的なアプローチだ」。
そして、スムーズな入眠に関してのキーワードが体温と脳が重要な役割を果たす。
<温度>
「深部体温と皮膚温度の差が縮まっていること」がカギ。入眠時には深部体温を下げ、皮膚温度はあげて差を縮める。
(1)就寝90分前の入浴→すぐに寝るときは「シャワー」がベスト
(2)足湯に秘められた驚異の「熱放散力」
(3)体温効果を上げる「室温コンディショニング」
<脳>
脳が興奮していると体温も下がりにくい。脳のスイッチを適切に切っていくことで、眠り初めの乱れを防ぐことができる。
(1)モノトナス(単調な状態)にすることは、眠るための脳のスイッチ
(2)「いつものパターン」を好む脳の性質を利用し「睡眠ルーティン」が役に立つ
(3)単なるリズム運動は不向き。受け身になって音楽などのリズムに身を任せる
ナステントを挿入するのを忘れたりしてしまうことがあるので、寝る前に歯を磨いた入り、トイレに行って手を洗い、そのあとにナステント、という習慣づけをすると継続することができると思う。入眠が浅いと、慣れている人でもだんだんナステントをつけている違和感を感じてしまうので、寝るまでのルーチンとしてぜひ取り入れてほしい。
5. 睡眠時無呼吸症候群について
私自身が大きないびきをかいており、気になる睡眠時無呼吸症候群についての話も記載する。
「「起きがけの眠気」が何日も続くのに、睡眠不足の自覚がないなら、睡眠時無呼吸症候群を疑ってほしい。眠っている間、無呼吸になって脳が覚醒反応をしめしても、必ずしも完全に起きるわけではないので、無呼吸の自覚がない場合が多い」「睡眠障害のサインともされる「いびき」だが、厳密にいうといびきは口呼吸であり、口呼吸も睡眠の質を下げる。哺乳類は本来、鼻呼吸が優位である。」「睡眠時無呼吸症候群に限った話ではない。今の睡眠の質が良くない人は、逆に言うと、眠りの正しい知識を得、眠り方を改善することで、脳がまるで新しく生まれ変わったことの世に思考がクリアになり、仕事のパフォーマンスが上げられるのだ」
いびきをかいて寝ているのは、軟口蓋が落ちたり、上気道が閉塞したり、舌根沈下などで起こるが、いずれにせよ口呼吸をしていることは間違いない。私も恥ずかしい話、ナステントをするまで、起きたら枕がよだれでべとべとだったことがたくさんある。いびきをかくと眠りが浅くなり、夜間にトイレに行く回数も増える。眠りが分断されるからさらに睡眠の質が落ちるというネガティブなサイクルに落ちてしまっていた。鼻呼吸ができるようになれば、人間も哺乳類なのだから、睡眠時も自然と口が締まる。まさに睡眠の質が工夫一つでどんどん上がっていく。
Amazonの書評を見てみると、確かに評価は分かれる本だと思う。エビデンスが十分なところと著者の感じているところが並列で記載されていたり、時に常に最高の状態であれ!と脅迫されているような気分にもなったが、意外に簡単にすぐ始められる睡眠改善の方法が記載されている。特に最初の90分、睡眠の質を上げることができれば、睡眠時も覚醒時もセットで改善されていく。本書を読んで、まずはできることからはじめてみてはいかがだろうか?
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