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スタッフコラム


脱・根性論的コンディショニング
〜アスリートのコンディショニング実態を解明せよ〜
スケートボード日本代表の専任トレーナー・大竹祐氏に聞くコンディショニングの5大要素とは?<前編>

スケートボード日本代表の専任トレーナー・大竹祐氏の写真

新型コロナウィルスの流行で、わたしたちの日常生活は大きく様変わりした。在宅ワークが増え、スマートフォンやパソコンのモニターを眺める時間が多くなったのは、筆者だけではないだろう。在宅時間が長くなった結果、「コロナ太り」したという人も多いと聞く。今回は、そんなコロナ禍で、わたしたちは自分に最適なコンディションをどのように維持すべきか、数多くのアスリートをサポートしているコンディショニングトレーナーの大竹祐氏に話を伺った。

まずは、大竹さんのお仕事について教えて下さい。

東京都内でコンディショニングジムを併設した整骨院を経営しており、一般の患者さんはもちろんのこと、サッカー選手やフットサル選手をはじめ、さまざまな競技をしているアスリートのコンディショニングサポートも行っています。また、ローラースポーツの国内競技連盟であるワールドスケートジャパンにおいて、スケートボード日本代表の専任トレーナーとしてチームに帯同しています。

多くのアスリートのコンディションをサポートしているということですが、どのような形でサポートをしているのでしょうか?

基本的にはアスリートも一般の方も大きくは変わらないのですが、私は「身体・栄養・睡眠・メンタル・社会面」の5つをコンディショニングに重要な要素として掲げています。これらは体を構成するもので、身体面はマッサージなどの施術や治療を通して、栄養・睡眠・メンタル・社会面についてはカウンセリングを通してサポートしています。

施術・治療の他に、カウンセリングも重要なのですね。

初診の1時間半のうち1時間はカウンセリングと検査にあてているように、特にカウンセリングには力を入れています。現代の医療は、痛みや障害のある部分をメインに見る「ミクロ医療」と言われているものなのですが、私が取り組んでいるのは全身、さらには精神面をも含めて包括的に見る「マクロ医療」というものです。この「マクロ医療」には、体の痛みや不調に関して「脅威のバケツ」という考え方があります。

「脅威のバケツ」とはどのような考え方なのですか?

スケートボード日本代表の専任トレーナー・大竹祐氏の写真

例えば蛇口とバケツがあったとして、痛みや不安、精神的ストレスなどの様々な“脅威”が蛇口の所まで溜まっていき、結果的に、痛みや不調として現れるという考えです。理学療法が進んでいるアメリカなどで近年取り入れられている比較的新しい考え方ですね。

スケートボード日本代表の専任トレーナー・大竹祐氏の写真

実際にこうした脅威についての課題を抱えているアスリートは多いのでしょうか?

私が見てきた中では、こうした課題を抱えていないというアスリートはいないと思います。実際に「いつまでプレー出来るのか」、「どうしたら怪我の少ない体を作れるのか」といった、心身の不安に関する相談をよく受けています。あとは、アスリートの場合は、大会や試合に向けて極度のプレッシャーに晒されていることも大きいですね。

競技によって求められる要素が違うように感じるのですが、実際に大竹さんが様々な競技のアスリートをサポートする中で、コンディショニングで力を入れていることはありますか?

私は疲労がない状態だけではなく、身体を上手く使えるようになることをコンディショニングと考えています。そのためには、筋力のバランスが大切になるので、アスリートだけでなく、一般の人にもコンディショニングトレーニングをしてもらい、インナーマッスルとアウターマッスルのバランスを整えてもらうようにしています。

それはその人に合った状態にバランスを整えるということですか?

そうですね。車に例えるとコンディショニングは整備で、痛んでいる箇所を治すことが修理、体を鍛えることが改造です。なので、普段から整備して良い状態をキープしておくことが必要になります。ただし、いくら良い車体でもとんでもない運転をしてしまえば、車は壊れてしまいますので、最低限のドライビングテクニックを身につけなければなりません。それは身体に例えると体の使い方をトレーニングして身につけ、インナーマッスルとアウターマッスルのバランスを整えることだと言うことができます。

インナーマッスルとアウターマッスルの役割の違いについて教えて下さい。

具体的に言うと、インナーマッスルは関節などを支える役割を、アウターマッスルは筋肉を動かす役割を果たしています。この支える力と動かす力のバランスが崩れると、関節を支えられず過度な動きになってしまうため、関節がダメージを受けやすくなってしまいます。そうすると脳が体を守るため、筋肉を使わせないように周辺をこわばらせて痛みを発します。これは交感神経の興奮作用と言われています。

それが肩こりや腰痛などの原因になったり、痛みがあって眠れないということに繋がるということですか?

そういうことです。このようにダメージを負うことが慢性疾患の一番の原因です。だからいくら身体を整えて緊張を取っても、筋肉のバランスが崩れていれば日常生活や軽い運動からでもこわばりの指令が脳から出てしまいます。だからこそコンディショニングがすごく重要で、リラックス出来る状態を作っていくためには、カウンセリングと施術・治療を並行して行うことが必要なのです。

後編に続く

取材・文・写真:瀬川泰祐(編集者・スポーツライター)


瀬川泰祐プロフィール

株式会社カタル代表取締役。社会派のスポーツライターとして、東洋経済オンライン、ITメディア、OCEANS、スポルディーバなどで執筆中。アスリートライブ編集長、ファルカオフットボールクラブアドバイザー。最近の取材テーマは「Beyond Sports」。社会の接点からスポーツの価値を探る。興行ビジネス歴20年。http://segawa.kataru.jp