コラム

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5分で読める睡眠専門医のはなし

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第4回 不眠症で外来を受診したら

前回は不眠症のタイプと不眠症改善するための睡眠習慣についてお伝えしました。今回は、睡眠衛生指導に合わせて行いたい不眠対策を紹介します。

睡眠衛生指導

不眠症の時に睡眠薬、睡眠導入剤の使用を使いたくなってしまうかもしれません。しかし、睡眠薬の効果を引き出すためにも睡眠習慣は大切です。

日本人の2割は何かしら睡眠に問題を感じているといわれており、厚生省でも睡眠対策を講じています。厚生省が示している「健康づくりのための睡眠指針2014」では睡眠12箇条が唱えられており、睡眠衛生指導も書かれていますので、ぜひ一度ご覧になるなることを推奨いたします。
特に就寝前のカフェインやアルコールの接種、たばこを控えたり、スマホやテレビを消すことを心がけてみてください。また就寝の90分ほど前に適切な温度で入浴されることもお勧めいたします。

寝付きをよくする、睡眠の質を良くするために、まず日常生活に睡眠衛生指導の内容を組み入れてみてください。睡眠のための習慣を一朝一夕で身につけることは難しいですが、2週間以上続けることで生活の睡眠リズムが整い、不眠改善の一助になることでしょう。

認知行動療法

しかしながら睡眠衛生指導だけでは不眠が改善されない、という方も多くいらっしゃいます。そこで長年の臨床研究で効果があげられている薬に頼らない治療方法が認知行動療法です。

認知行動療法は睡眠についての知識、睡眠状態を認識、治療についての正しい知識を得て、自身の行動や生活習慣を振り返ることで不眠の改善を図るものです。

不眠症で外来を受診した際におすすめする簡単な認知行動療法のひとつに「睡眠日誌」があります。
睡眠日誌は布団に入った時間と実際に寝た時間、目が覚めた時間と布団からでた時間を記録します。また夜間に起きる方は起きていた時刻や昼寝の時刻なども記録します。ただ正確な時刻にこだわることは睡眠リズムに悪影響を及ぼすため、大体の時刻でかまいません。
睡眠日誌は紙への記録だけでなく、最近ではスマホアプリでの記録も可能です。2週間以上記録を続けることで自身の睡眠の問題点を見つけることができるかもしれません。

不眠症に多い睡眠の間違った認識

睡眠日誌をつけているとわかる不眠症の方に多い睡眠パターン、習慣があります。

・一日のうち寝床にいる時間が長い
不眠症の方の中には睡眠時間を8時間以上とらないといけないと思いこんでいる方がいます。生まれたての新生児は20時間程度の睡眠を必要としていますが、年齢を重ねるごとに必要な睡眠時間は少なくなっていきます。
個人差はあるものの、成人では6~7時間程度の睡眠時間、高齢者では5~6時間が必要睡眠時間といわれています。日中の活動に支障のない睡眠時間がとれていれば問題ありませんので、あまり睡眠時間の長さにはこだわらないほうがいいでしょう。

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長時間寝ることにこだわるあまり、眠くないのに布団に入ると寝付くまでの時間も長くなり入眠困難を訴えることになります。入眠して5~6時間後に目が覚めると、自身にとって十分な睡眠時間がとれているにもかかわらず中途覚醒と感じてしまいます。

睡眠日誌をつけ、睡眠の正しい知識を身につけることで睡眠リズムを整えることにつながるのです。



・夜眠れなかったので昼間寝てしまう
夜間に眠れないために日中眠くなってしまい昼寝をするかたも多くいます。夜眠れないからといって昼寝を1~2時間をしてしまうと夜眠れなくなってしまいます。昼寝をとるのは15時までに、15分から20分程度にするようにしてください。
寝床で寝るのは夜の就寝時間にとどめ、昼寝のときにはソファーや椅子に座って寝るなど、敢えて睡眠の質を追求しないことをお勧めします。
また昼寝のまえに一杯のコーヒーを飲むと寝覚めがよくなりますよ。

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・夜中におきると時計をみてしまう
夜中に目が覚めたときに時計をみてしまう方が多い印象です。夜中に起きてしまい、夜中に起きた後眠れなくなってしまうという方は寝床に時計を置かない方がいいかもしれません。
夜中に時計をみてしまうと眼がどんどん冴えてしまうのです。トイレで眼がさめるという方もいますが、時計はみないようにしてください。
もし夜中に起きてしまい目が冴えて眠れない、という場合には眠くなるまで寝床から離れることをお勧めします。

病気がかくれていることもある

不眠で来院される方のなかには睡眠障害の症状が隠れていることがあります。夜寝るときになると脚がむずむずして眠れない「むずむず脚症候群」は入眠障害と間違われることがあります。いびきの音や無呼吸の症状が特徴的な「睡眠時無呼吸症候群」や、寝ている間に四肢がピクピクしてしまう「周期性四肢運動障害」は夜中に起きてしまう原因になるのです。
問診である程度の睡眠障害の症状がある可能性がわかりますが、入院して行う「睡眠時ポリソノグラフィ検査(PSG)」を行うことで、より詳細な状態が分かりますので、ご自身の状況によっては医師に相談されることもお勧めいたします。

また、うつ病など精神疾患の患者の9割は睡眠障害を伴っているといわれています。ご自身では気付かない内に精神疾患をわずらっていることもあるのです。

■困ったら病院の受診を

睡眠衛生指導や睡眠日誌などセルフケアを習慣化することで不眠症の改善が得られるかもしれません。しかし、改善が得られない場合には無理せず睡眠科や精神科を受診してください。

木村 眞樹子プロフィールの写真

木村 眞樹子プロフィール
医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。
妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。

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