パフォーマンスアップのための睡眠講座

パフォーマンスアップのための睡眠講座
アスリート編

世界を楽しむ原動力は
睡眠が生み出してくれる

スキーベースジャンプ アスリート 佐々木 大輔
プロフィール:佐々⽊⼤輔(ささきだいすけ)。⾼校卒業後、カナダの旅⾏会社で現地ガイドとして勤める中、シェーン・マッコンキーのパフォ-マンスに衝撃を受け、フリーライドスキーの世界へ引き込まれる。1998年から数々の世界⼤会に数少ない⽇本の競技者の⼀⼈として参加し、現在は⽇本でのスキー⼈⼝の拡⼤、無限に広がるスキーの魅⼒、と可能性を広めるため、精⼒的に活動中。

スキーで岩の間を滑⾛し、急斜⾯を滑り、崖から滑空する、スキーベースジャンプ。佐々⽊さんは「スキーベースジャンプ」で「世界最驚」を⽬指しているプロアスリートです。スキーベースジャンプは、道なき道を果敢に滑るフィジカルだけでなく、滑⾛ポイントまで数⽇をかけて登⼭する必要もあるメンタルにもハードな競技です。雪⼭という過酷な環境の中で、コンディションを整え、集中⼒をピークに持っていくための秘訣をお聞きしました。

体のコンディションを整えるために、気を付けている点を教えてください

実は、スキーのために特別になにかする、ということはないんです。
というのも、スキーシーズンは短く、冬になってからコンディションを整えるのでは遅いんです。
そのため常に臨戦態勢で⽣活することで、基礎能⼒を常にキープすることが⼤切だと考えています。
普段から意識しているのは、バランスをとるための筋⼒や感覚を気にしながら⽣活することですね。例えば、歩いている時は頭がブレないように意識する、もしブレているならどの程度ブレているのかを気にしながら歩くなど、ですね。

ベースジャンプは、滑るまでが⼤変だとお聞きしましたが

ええ、⼤変です(笑)⼭の麓までは⾞を運転していきますが、滑るポイントまでは登⼭ですね。数時間かけて⼭を登りますが、時に気持ちが⼊りすぎて興奮してしまうので、メンタルを乱さないことが重要です。また、天候によっては⼭で何泊もすることもあり、平常⼼でいるためにも、休める時にしっかり休むようにしています。 テント泊は狭くて寒くて、単純に寝るだけでは休んだことにならないんです。寒さを防ぐために服を着込めば、その重さや締め付けもストレスになるので、意識を完全にオフにして睡眠をとらないと、質のいい休養にならないんですよ。

睡眠について意識し始めたのは、スキーベースジャンプからですか︖

実は睡眠については昔から悩んでました。中学⽣の時から⽇中ボーっとしている時間が⻑く、いくら寝ても昼間にどうしょうもなく眠くなってしまうことが多かったんです。ひどい時は、朝起きた直後から眠くて頭や⽬の奥がズーンと痛いんです。⽬が覚めているのは、ご飯を⾷べている時だけということも少なくなかったです。ただ⾃分では、部活をやめて怠けた⽣活や、受験勉強にかこつけた夜更かしが原因だと思っていました。

その頃からいびきをかいて寝てたんですが、「いびき=熟睡」って感じでまわりは「佐々⽊はぐっすり寝ている」と思うんです。友⼈の家に泊まっても「熟睡してたよ」と⾔われます。まわりからそう⾔われると、眠れていないのは⾃分が思い込んでいるだけで、気のせいなのかと思うようになりました。

またいびきは相当うるさかったようで、ツアー中は⾃分のいびきでお客様が眠れないのではと⼼配で、お客様が寝静まったあとに寝るようにしていました。実際お客様が眠れなくて、私が廊下で寝たこともあります(笑)。寝ているのに眠れていないし、寝ようとすると例えば同じ部屋で寝ている妻に、いびきがうるさくて迷惑をかけるのではないかと思っていました。眠れないのは、僕もまわりの⼈もいびきが原因だと考えていました。

そのつらい状態はどのくらい続いたのでしょうか︖

20年以上続きました。ついこの間まで眠いままでしたよ。それからいびきですね。妻との移動が多くなりますが、⾞で寝るにしろ、テントで寝るにしろ、とにかくうるさいと、私(妻)が眠れん︕と(苦笑)。あと息が詰まったような感じで怖いとも⾔われました。

とにかくお互いに眠れないと休養にならないので、⾊々な睡眠改善グッズを試しました。⿐頭にテープを貼ったり、フックを両⽳に引っ掛けて⿐を広げる器具を使ったり、⼝が開かないように貼るテープも試しましたが、あまり改善はされませんでした。

改善のきっかけは、今年になって妻からの強い勧めで病院に⾏ったことなんです。検査をした結果「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」に、僕はギリギリで該当すると⾔われました。そこで聞いたのは、睡眠中の無呼吸は誰にでも起こることで、その頻度が多い⼈ほど睡眠が浅くなるということ。僕はそこまでひどい状態ではなかったので、CPAP(※1)やマウスピース(※2)を使う程ではない、と診断されました。

※1: 機械で空気に圧⼒をかけて、⿐から気道に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防⽌する治療器具
※2: 下顎を前にすることで気道を確保し、睡眠時の気道の狭窄や閉塞を防ぐ治療器具。

どのような対処をされたのですか︖

その病院で勧められたのは、⿐に⼊れるチューブでした。その器具を使うには処⽅指⽰書というものが必要なのですが、その病院ですぐに発⾏してくれて、しばらく試してみることになりました。 原理はすごくシンプルで、チューブを⿐に⼊れて気道を確保し、睡眠中の⿐呼吸ができるようにしてくれるというもの。はじめは⿐に物を押し込むことに慣れなくて、寝ている間に触ったり外してしまったりしていましたが、3⽇ぐらいで慣れました。 それに⽇に⽇に眠気がなくなっていく感覚がありました。これまでは、移動中はすぐに寝てしまっていたのですが、⽬が覚めているので移動時間は作業に当てられ、仕事もできる。すべての効率がもの凄く良くなったと思いました。でも、それまでが悪すぎたんですよね。

病院に⾏く事に抵抗はなかったですか︖

抵抗以前に、「睡眠不⾜」とか「眠い」から病院に⾏く、という発想がありませんでした。いびきがひどいとは聞いていましたが、本⼈は⾃分のいびきに気づきにくいですし、「たかがいびき」だとも思っていました。
でも妻をはじめ、まわりの⼈が「いびきやひどい眠気は、なんらかの症状だ」と教えてくれて、僕の背中を押してくれたのはありがたかったです。⾃分は正しい⽣活を送ろうとしている、⽣活を改善しようとしているのに、⽇中眠い状態が続いてつらい。そんな時は、⼀⼈で悩まず、⼀度病院に⾏ってみてはいかがでしょうか。僕はそれで世界が変わりました。

軽い症状も含めると睡眠に関して悩んでいる⽅多いと思います。その⽅々へメッセージをいただけますか

眠いのは⾃分が怠けているからだと責めないで欲しいです。どうしても⽇々の⽣活の中でまわりの元気な⼈と、眠い⾃分を⽐べてしまうと思います。でも、眠気でパフォーマンスが上がらない⾃分が悪いのではなくて、体が眠れていない、休めていないというサインを出しているんだと気づいて欲しいです。

だから、もし悩んでいる⼈は、本当に⼀度病院に⾏ってみることをお勧めします。

よく眠れる、質の良い睡眠がとれるようになると、何でもできると思うくらいポジティブになれます。また、普段の⽣活での休養がしっかり取れるようになった事で、最初にお話しした基礎能⼒が⼤きく向上したと実感しています。

だから僕はもうすぐ始まるシーズンが楽しみで楽しみで仕⽅がないんです。今までも楽しくてワクワクしていたスキーが、もっと楽しくなるってどんな感じなんだろうって。
僕の場合は、質の良い睡眠と休養が、このハードなスキーベースジャンプを続けられる原動⼒に間違いなくなっていますね。

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