パフォーマンスアップのための睡眠講座

パフォーマンスアップのための睡眠講座
栄養士編

パフォーマンスの向上は
身体のリズムを作る事で生まれる

栄養士 深野 祐子
プロフィール:深野祐⼦(ふかのゆうこ)。Japanマラソンクラブ チーフインストラクター、⽇本ライフタイムスポーツ協会認定ジョギングマスターインストラクター、管理栄養⼠。多くの⼈に正しい⾷の知識を広めていきたいと願い、栄養学を学び、給⾷会社勤務を経て、スポーツネットワークサービスに⼊社。現在は主にマラソンランナーへの栄養指導を⾏う。

最後の講義はビギナー向けのマラソン教室「Japanマラソンクラブ」でチーフインストラクターとして活躍する深野祐⼦さん。そして管理栄養⼠でもある深野さん⽈く「結果を出す⾝体づくりには、正しいリズムで⽣活する事が何より⼤切なんです」との事。この冬のマラソンで完⾛やサブ4を⽬指す⼈は必⾒です。

タイムを上げたいなら正しい⾝体のリズムを作りましょう

JAPANマラソンクラブでは「フルマラソンを完⾛したい」「タイムを縮めたい」という相談をよく受けます。そして私が栄養⼠という事もあり「⾷事はどんな物を⾷べたらいいですか︖」「トレーニングに効果的な⾷べ物や栄養を教えてください︕」とも聞かれます。その時に私はこうアドバイスします。

「まずは⼤会に向けて⾝体のリズムを作っていきましょう」と。

トレーニングで⾝体を作っていく際に、何を⾷べるかも⼤切なのですが、⾷べたものつまり栄養が正しく吸収されて使われる事がとても重要なんです。その吸収に⼤きく関わってくるのが⾝体のリズムです。マラソンは想像以上に⾝体に負担をかけるスポーツです。筋⾁だけでなくエネルギーを⽣み出すために内臓も酷使します。⾷べたものをしっかりと消化・吸収・排泄できるように⾝体のリズムを整える事は、“マラソン”という過酷なスポーツに耐えうる⾝体を作るだけでなく、⾃⾝のコンディショニングを整え、トレーニングの効果を発揮しやすい状態にしてくれます。

わたしたちの体には「体内時計」が備わっており、⾝体は⼀⽇の中でもリズムを刻んでいます。(体温や⾎圧、ホルモン分泌、臓器の働く時間なども⼀⽇の中で変化します。)⾝体のリズムが整う事で栄養素を吸収する⼒も⾼まり、さらには運動のパフォーマンスも⾼まっていきます。体内時計は⼀⽇25時間のリズムを刻んでいるため、毎⽇リセットする必要があります。そのために、まず朝起きたら、カーテンを開けて朝の光を浴びる。そして起床1時間以内に朝⾷を取る。この2つを必ず意識するようにしましょう。

トレーニングで失った栄養素を⼣⾷で取りましょう

⼣⽅から夜にかけての時間帯は、体温が⾼くなり運動能⼒が⾼まるので、効率よくトレーニングできると⾔われています。そしてトレーニング後、30分以内にたんぱく質、炭⽔化物を取りましょう。
その時間帯に⼣⾷が取れればベストですが、すぐに取るのが難しい場合は、補⾷でおにぎり(具は鮭やたらこなど)を⾷べて、その後でもいいですね。
この季節におすすめの補⾷がコンビニで気軽に買える⾁まん。
⽪は炭⽔化物、餡はお⾁のたんぱく質なので意外とバランスいいんです。
その後トレーニングで失った栄養素を⼣⾷で取ります。
摂取する栄養素は、炭⽔化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルの五⼤栄養素がベース。
毎⾷のメニューは定⾷形式の⾷事で、ご飯、おかず、みそ汁、野菜の⼩鉢が付いているような⼀汁三菜を取ると栄養バランスが整いやすくなります。

毎回定⾷形式の⾷事が難しい場合は、⾒た⽬の⾊でよいのでできるだけ5⾷の⾊(⽩・⻩・⾚・緑・⿊)を揃えるようにしてみてください。ちなみに最近は糖質制限が注⽬されていますが、お⽶などの炭⽔化物を極端に控える必要はありません。
逆に不⾜すると筋⾁が分解されて、筋⾁から糖を作り出す動きがはじまってしまうので、定期的に運動習慣のある⽅は制限しない⽅がいいです。
制限するならお菓⼦やジュース(砂糖⼊りのコーヒーなども含め)などに含まれる糖分や脂肪ですね。

⾝体を休めるには内臓を休めましょう

第1回のインタビューで栗⽥さんもおっしゃっていたように、栄養、休養、運動の三本柱は⾝体づくりに深く関わっていて、どれが抜けてもバランスが悪くなってしまいます。私は⾷事で⾝体を作る事を第⼀に、睡眠で⾝体を回復、そして運動のパフォーマンスを上げる事を考えます。

栄養を取る事は皆さんしっかり考えられるんですが、休む事っておろそかにされがちなんです。例えば就寝前の3時間以内はできるだけ⾷事は取らない⽅がいいんですが、これは内臓を休ませるためなんです。体が栄養を吸収する率は⼣⽅から夜にかけて⼀番⾼まりますがそれを過ぎると内臓は休息モードに切り替わります。そこに⾷事が⼊ってしまうと、本来睡眠で休ませたいはずの内臓を無理に活動させてしまい、質のいい睡眠にならず、疲労の回復や⾝体の修復を⾏うタイミングを逃してしまいます。また、翌朝の朝⾷で体内時計をリセットするためにも、⼣⾷後から朝⾷まで10時間程度の空腹な時間を作れると理想的ですね。どうしても寝る前にしか⾷事を取れない時は、脂っこくなく消化のいいものを量は抑えて⾷べましょう。お⾖腐や⽩⾝⿂、⾚⾝の⾁などの良質なたんぱく質、野菜を上⼿に利⽤し、調理法は蒸す・煮る・焼くがおすすめです。具だくさんのみそ汁や鍋は満腹感もあり、ヘルシーなのでおすすめですよ。

朝⾷のタンパク質が、夜の睡眠の質を⾼めます

“睡眠”に着⽬すると、朝⾷で取ったたんぱく質は、⽇の光を浴びると「セロトニン」というホルモンになります。
セロトニンは14〜15時間ほど経過すると「メラトニン」というホルモンに変化し睡眠を促進します。
特に⼊眠後3時間が成⻑ホルモンの分泌されるタイミング。ここで質のよい睡眠を取る事で、疲労が回復し⾝体が作られていくんです。トレーニングの効果を出すために、睡眠はとても重要なんです。
これらの時間を逆算すると、21時頃までに⼣⾷を取って、23時ごろ睡眠。6時〜7時頃に朝⾷を取るのが理想です。これが朝9時などだと、その分昼⾷、⼣⾷、就寝の時間が後ろにずれ、⾝体のリズムが乱れてしまいます。私も朝の5時くらいに起きて、6時には朝⾷を⾷べています。
また、普段の起床時間を⼤会当⽇の朝を想定した時刻にあわせておく事も重要です。例えば午前9時にスタートする⼤会で、会場まで2時間かかるとなると、⾷事の時間や起床時刻を何時にする必要があるか︖これもシミュレーションしておきましょう。
⼤会当⽇にいきなりだと⾝体が順応せず、⼗分に動けなかったり、消化不良を起こしたりする事もあります。
トレーニングが順調でも当⽇に⼒を発揮できない…という事も起こりうるのです。⼤会当⽇と同じ時刻に起きる事が難しくても、できるだけ近づけるようにしてみましょう。
⾛る練習だけでなく、胃の消化や栄養の吸収、睡眠時間なども含めて⾝体のリズムを整えておく事はとても重要です。
⼤会に向けての準備期間は⾝体づくりの事も考え、最低でも4〜5か⽉、半年ほどみておくと無理なく準備できると思います。

⾝体のコンディションは主観とデータを照らし合わせましょう

私はタイムが伸びないなどの相談を受けた時には、ただ練習不⾜と判断するのではなく、その⽅のライフスタイルの中で何か改善すべき点がないかもあわせて考えます。
⽣活や睡眠のリズム、⾷事の取り⽅、ストレスなどの原因がある場合が多いので、⽇常⽣活に関する事を聞いて深掘りしていきます。
また、疲れが取れないとか、⾝体が重いなど、本⼈の主観で感じている事は、排便状況、体重や⼼拍、⾷事の内容や睡眠時間などの客観的なデータを照らし合わせます。最近は、スマートウォッチやスマホのアプリで⽣活状態の記録や管理ができるようになったので、それを利⽤するといいと思います。
何時間寝た時に疲れを少なく感じるか、体重が何kgだと体が重い(軽い)と感じるのかなど、データ化されて可視化されるとはっきりします。
特に睡眠は⾃分の意識がなく状態を把握しにくいので、2回⽬のインタビューで佐々⽊選⼿がされていたようにアプリで可視化するといいと思います。
もしいびきの頻度が⾼いようですと酸素不⾜で正しく睡眠が取れていない事が多いので、充分寝ているのに疲れが取れないと感じる⽅は⼀度アプリで調べてみる事をおすすめします。
体の調⼦は主観で判断し切るのは難しいです。
タイムや調⼦が悪い時に本当に体調が理由なのか判断するために、そういったツールを活⽤するのはひとつの⼿段です。
そして体調が悪い時は無理して⾛らず、まずは休養しましょう。

始められる事から始めましょう

タイムの向上にはとにもかくにも、まずは⾝体のリズムを整える事が⼤事です。
しっかり⾷べて、よく眠り、トレーニングする。それを続ける事で⾝体の⼟台ができれば、必ずタイムも上がってきます。⽇々の⽣活で続けていく事は難しい⾯もあると思います。
でも、少しだけ早起きしてみる、朝⾷を⾷べるようにしてみる、⼣⾷が遅い⽅は⾷べるものを変えてみる、寝る前に睡眠アプリを使って睡眠状態をチェックして質の良い睡眠を取るなど、まずは始められる事から始めてみてください。
そしてリズムを作る事を意識していけば、きっと皆さんの⽬標のタイムに近づけると思います。