コラム
●著者:成井 浩司
●新書: 192ページ
●出版社: 講談社
●発売日:2007/7/20
vol.04 意外と怖い睡眠時無呼吸症候群(前編)
1章 睡眠時無呼吸症候群は病気です
睡眠中になんども呼吸が止まってしまうという「睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)」は特に、中年男性の多くが身に覚えのある「いびき」が関連している。SASを引き起こす主な要因である「いびき」をかく人は中高年男性の約6割、日本全体では約2,000万人いるとされ、そのうちSASの患者は300万人から500万人ともいわれています。
この病気の問題点は、本人に「SASである」という自覚症状がほとんどないことにあります。その症状がみられても、「たかがいびき」だと、それほど深刻に考えることなく、治療を受けずに済ます人が多いのです。
しかし「いびき」は、家族の眠りを妨害するだけでなく、人間の健康に致命的な影響を及ぼすことが近年の研究によって明らかにされています。さらに主にいびきによって引き起こされるSASは、放っておけば生活習慣病やED、うつ病などの重大な合併症を起こしかねない病気なのです。いびきはもはや治療すべき病気であると言えるのです。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状は「10秒以上続く無呼吸が一晩(7時間以上の睡眠中)に30回以上、もしくは睡眠1時間に平均5回以上起こる」と定義されています。SASの特徴は、いびきがいったんやんだ後、しばらくして大きな音とともにいびきが再開されることです。これを睡眠中に何度も繰り返すのです。静かになっている間、その人の呼吸は止まっています。再開されたときの「カハッ」というけたたましい発声は、無呼吸状態の息苦しさに耐えられず再び呼吸を始めた時のものです。この状態が慢性化すると、心臓や全身の血管に負担がかかり、高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞など、体にさまざまな悪影響が見られるようになります。
さらに無呼吸がおこる原因によってタイプが大きく「閉塞型」と「中枢型」の二つに分けられます。「閉塞型」は、睡眠中に空気の通り道である上気道が閉じてしまい、呼吸ができなくなるもの。ほとんどのケースはこのタイプです。
<感想>
ナステントの自主調査でも、いびきに対して対処を検討していない、検討したいがやりかたがわからないという回答が、いびきをかいていると自覚している人の中で約7割を越える回答がありました。たかがいびき、と放置するのではなく早めの対処が必要だと考えていただきたいです。
※画像はナステント株式会社ホームページより
2章 こんな兆候に心当たりはありませんか?
SASの患者には、共通する体格的な特徴があります。それは「いびきをかく人」に共通する、①大きなお腹②短い首③小さなあご、の3つです。
日本人にとってこの病気はいわゆる太った中高年だけのものではありません。これは「短く平らな顔」「小さなあご」「のどが咽頭の近くにある」など、東アジア人特有の顔面骨格構造に原因があるようです。また骨格構造に加え、やわらかい食べ物が増え、日本人はあごの発育がますます悪くなる傾向にあり、肥満も増加していますから、いっそうSASになりやすくなっているといえます。
<感想>
実際にナステント体験会やナステント外来で、参加者の方にお会いしてもほとんどの方はあまり太られていなかったりします。どちらかというと顔が小さい方が多く、特に若い人たち(20代~30代)は顕著です。いびきはお父さんがかいているもの、というイメージが強かったですが、顔もあごも小さい若者も骨格の構造上いびきをかく人が増えてきているかもしれません。
日本におけるSASの患者数は、ここ数年、急増しています。なかでも受診者数が増えているのが、働き盛りの30代男性です。患者の多くが訴えるSASの代表的な症状は、昼間の極度の眠気です。重要な場面ですら強烈な眠気に襲われ耐えられず寝入ってしまうのです。日中の眠気や居眠りが原因で命を落とす危険すらあるのです。しかし、患者の多くは、SASであることを自覚していません。そのため、周囲からは単なる怠け者だと思われ、本人は理由もわからず悩んでいるケースがほとんどです。
SASの患者の自覚症状の一つに「日中のだるさ」があげられます。これはきちんとした休息、つまり「睡眠」がとれていないという何よりの証拠です。この「だるさ」が起こるのは次のようになっているからです。
気道が狭くなって呼吸が妨げられると、いびきを生じると同時に、当然肺に空気が入っていきにくい状態となります。このとき血液中の酸素は通常よりも少なくなります。すると心臓はより多くの血液を前進へ送り出そうとするため、血圧が上昇します。同時によりおおくの空気を取り入れようと指令を出すために、眠っていた脳が活性化され、これによって深い眠りが妨げられてしまうのです。このようにいびきの体への負担は大変大きなものです。十分な睡眠をとっているつもりでも、朝、目覚めた時から体がだるく、何をしてもすぐに疲れてしまうのはそのためなのです。
※画像はナステント株式会社ホームページより
3章 SASが引き金となる危険な病気
SASの諸症状で最も恐ろしいのは、本人の自覚がなく進行する合併症です。例えば高血圧、狭心症、心筋梗塞、心不全を合併する確率は高くなりますし、中等度の患者の場合でも、健康な人に比べると、高血圧で約3倍、心疾患で2倍、脳血管障害で2倍もの発症率になるのです。
SAS患者のうち、約40%が、脳卒中や心筋梗塞の引き金となるメタボリック・シンドロームを合併しているという研究結果があります。
※画像はナステント株式会社ホームページより
肥満者のSAS発症率は、非肥満者の3倍以上という報告があるほど、肥満は大きな危険因子です。肥満の人はSASになりやすく、その逆もまたしかり、なのです。そんな悪循環に陥ってしまうのは、患者が十分に深い眠りを得られないからです。睡眠中はホルモンを分泌する内分泌器官にとって「仕事」の時間です。眠りが浅くなることにより、とくに成長ホルモン分泌の低下はその最たるものです。
成長ホルモンには、骨や筋肉の成長を促したり、壊れた筋肉を修復すしたりする働きのほかにも、脂肪を分解するという重要な役目があります。成長ホルモンがスムーズに分泌されていれば、脂肪は分解され体にたまることもなく、肥満にはなりにくいというわけです。深い眠りが得られれば脂肪も分解され、自然に痩せられるということです。質の良い睡眠をたっぷりととることが、もっとも効果的なダイエット方法ともいえるでしょう。
深い眠りによって成長ホルモンの分泌か活発にになり、内臓脂肪が減少し、さらには日中の眠気や倦怠感が解消され、生活の質の改善、食事・運動療法への意欲が高まった結果といえるでしょう。
ある調査では、CPAP治療で減量した人の多くは、4-5か月の経過で7~27期gの減量に成功し、と同時にAHIは1時間当たり14~50回復減少していました。SASの治療が減量にも効果があることがわかります。もちろんCPAPだけに頼るのではなく、この病気を根本的に治すための努力も重要です。特に肥満が主な原因だと考えられる人は、この治療法と並行してダイエットにも取り組む必要があります。
このSASにかかりやすいのは中高年の男性だけではありません。特に、閉経後で肥満傾向のある女性は要注意です。呼吸中枢を刺激する女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)がはたらいているために、女性がいびきをかくケースは少なく、男性に比べればSASになる確率は低いと言えます。しかし、プロゲステロンの分泌が急激に減少する閉経期を迎える40-50歳の女性はこの限りではありません。閉経後は男女とも発症率はほぼ同じになるというデータもあります。
<感想>
睡眠と成長ホルモン(グロースホルモン)の関係については「スタンフォード式最高の睡眠」にも記載されている通りです。CPAP治療をするとやせる、というのは読み手によってミスリードしてしまうかもしれませんが、太っている人の睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関連性はあるため、減量に取り組む必要は確かにあります。
また女性に関しても、加齢による影響でいびきや睡眠時無呼吸症候群になる可能性があることがわかります。
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