私の睡眠環境もしかして ヤバイ?私の睡眠環境もしかして ヤバイ?

家路を急ぐ人たちでにぎわう駅前の商店街を、スナックいびきのママは自転車でのんびりと走っていた。愛猫・グレースのフードのカリカリがなくなりそうなので、ペットショップに立ち寄ろうと少し早めに家を出たのだ。

グレースはママが飼っている猫だ。11歳という年齢もあってか、食が細くなってきたことを心配していたところ、同じ商店街にあるペットショップの愛梨沙という女子大生店員が、熱心にシニア用フードのことや手作りごはんのことを教えてくれた。おかげでグレースはまたおいしそうにご飯を食べるようになった。ママはそんなことを思い出しながら、ペットショップへと自転車を走らせた。

「いらっしゃいませ。あ! グレースちゃんのところのママさん」
「こんばんは。フードを買いに来たんだけど、愛梨沙ちゃんどうしたの? なんかげっそりして疲れてるみたい。」
「えっ?全然そんなことないですよー。えーっと、グレースちゃんのフードですよね」

猫用フードのコーナーへと先導する愛梨沙の横顔を観察すると、目の下にうっすらとクマが浮かんでいる。ピンときたママは尋ねた。

「愛梨沙ちゃん、もしかして最近眠れてないんじゃない?」

ママがそう問いかけると、愛梨沙は目的のフードを差し出しながら観念したようにうなずいた。

「ママってホントに鋭いですよね。実は、寒くなり出してから、どれだけ寝てもなんだかすっきりしないんです。昨日なんて、自分のいびきで目が覚めちゃって。もう、びっくりですよ」

愛梨沙は自嘲気味に笑い飛ばしたが、反対にママの表情は険しく曇っていた。

「愛梨沙ちゃん、もしよかったらバイト終わりにうちのお店に遊びに来ない? 相談に乗るわ」
「悪いですよ! いびきの相談なんて」
「なーに寝言みたいなこといってんのよ。愛梨沙ちゃんだってグレースのごはんのことで相談に乗ってくれたじゃない。お互い様よ」
「ママさん……」
「じゃあまたあとでね。待ってるわ」

まだ「準備中」の札がかかっているスナックいびきの扉が開き、すき間から愛梨沙が顔をのぞかせた。

「よかった、来てくれて」
「開店前で忙しいのにすみません」
「気にしないで。早速本題に入っちゃうけど、寒くなってきてからぐっすり眠れないのよね?」
「そうなんです。翌日になっても疲れが残っている感じで」
「だとしたら、寝室の環境が影響しているかもしれないわよ」
「え? 寝室の環境ですか?」

ぽかんとする愛梨沙に、ママは手入れの行き届いた指先で軽くデコピンを食らわせた。
「ぽかんとしてないの。ここからは居眠り禁止よ!」

「チェックしてみた?」
「はい。私、最近朝起きると口の中がカラカラなんです」
「このところの冷え込みで寝室の温度と湿度が低くなっていたのかもね」
「そうか! そのせいで鼻づまりを起こして、いびきをかいていたのかもですね。帰ったら早速寝室の温度と湿度を確認してみます」

表情が明るくなった愛梨沙にママはうなずいた。

「おせっかいかもしれないけど、もう少し続けさせて。寝室の温度と湿度を見直してもいびきが改善しなかったら、寝具を変えてみるといいかもしれないわよ」

「へえ、そうなんだ。マットレスは高くてムリかもだけど、枕なら私のバイト代でなんとか買えそう!」

笑顔になった愛梨沙を見ながら、ママは嬉しそうに口元を緩めた。

「愛梨沙ちゃんに笑顔が戻ったのはよかったけど、もう一つおせっかいを言わせてもらうわよ。水を差して悪いけど、今話したのは一時的な対処だからね。いびきが続くようだったら、鼻づまりからくる一過性のいびきじゃないかもしれないわ。その場合は、早めに病院に行くこと。いいわね?」 「はい!」

こうして今日もまた一人、いびきに悩む子羊が「スナックいびき」の名物ママによって救われたのだった。

それではみなさま、どうぞ良い夢を……。