第四夜「パパ、息してないと思った」と息子に泣かれて 2児の父・俊明第四夜「パパ、息してないと思った」と息子に泣かれて 2児の父・俊明

今年も残り1か月を切り、スナックいびきは忘年会の二次会客でにぎわっていた。 23時を過ぎたころ、一人の客を見送りに外まで出ていたママが店内に戻ってきたところで、サラリーマン客2人組のどちらかが発した「泣かせちゃったのかよ」という言葉が耳に入ってきた。

「どうしたの? 誰を泣かせたって?」

カウンターに戻ったママが、さりげなく二人の会話に加わる。

「いや、違うんだよママ。下の坊主の話」

言い訳をするように答えた俊明は、忘年会や歓送迎会などの会社の行事帰りに、今日も一緒にやってきた同期と店を訪れてくれる。ほかの同期はすでに転勤するか、あるいは退職してしまって、50代になった今、本社に残っているのはこの二人きりらしい。

「この前の日曜日、洋(よう)を泣かせちゃって」
洋は俊明の次男で、たしか今年小学2年生になったはずだ。

「あら、ひどく叱ったりでもしたの?」
「うーん、そうじゃなくて」
「どうしたの? なんか深刻そうだけど」

深刻ってこともないんだけど、と口ごもってなかなか話し出さない俊明を見かねた同期の光男が「いいからママに話してみろよ」と促した。
俊明は、せっかくの楽しいときを自分の悩み相談の時間にしてしまうことを申し訳なさそうに、そして、光男の変わらないやさしい心遣いに感謝しながら語り出した。

「あのさ、ママ。寝てるときに息が止まるなんてことあると思う?」
「どういうこと? ちょっと詳しく話してみて」

先週の日曜日、二人で留守番をしていた最中にうっかり昼寝をしてしまった俊明は、泣きじゃくる洋に揺り起こされたという。

「そのとき洋が『ガーガーいびきかいて寝てると思ったら急にぴたっと止まって、息をしてないみたいに見えたから、パパが死んじゃったんだと思って怖かった』って……」

それを聞くなりママは、何かを理解したように小さくうなずき、表情を引き締めて話し出した。

「なるほどね。もしかしたら、そのいびきには病気が隠れているかもしれないわよ」
「ママ~、怖いこと言わないでよ。もうすぐ新しい年を迎えようってときに」

「なーに寝言みたいなこといってんのよ! だからじゃない。もし病気の可能性があるって分かったら、医療機関が休みに入る前に受診できるでしょ」

俊明が不安そうな表情を浮かべる一方で、「たしかに」と光男が隣で首肯している。それを見て、俊明も観念したようにうなずいた。

「ママ、もう少し詳しく教えてもらってもいいかな」
「もちろん。ただし、ここからは居眠り禁止よ!」

「でもさ、ママ。寝てる間のことなんて分からないよ。洋に言われて初めて気づいたくらいだし」
「そんなときはセルフチェックをしてみて。セルフチェックはSASの診断をするものじゃないけど、そのリスクを知ることができるわ」

「うわっ! 俺、5個も当てはまってる!」
「だったら早めの受診をおすすめするわ。お医者様にSASかどうかを診断してもらって、いち早く治療を開始することが大切よ」

「色々な対応策はあるってわけか。そうと分かれば、洋に余計な心配をかけないためにも、早く自分のいびきをなんとかしないと」

前向きな表情に変わった俊明を見て、隣に座る光男にも笑顔が浮かんだ。

「早速この週末に病院に行ってみるよ! ありがとう、ママ!」

こうして今日もまた一人、いびきに悩む子羊が「スナックいびき」の名物ママによって救われたのだった。

それではみなさま、どうぞ良い夢を……。