コラム
脱・根性論的コンディショニング
〜アスリートのコンディショニング実態を解明せよ〜
ルーティンをうまく使って睡眠をコントロールする(後編)
新型コロナウィルスの流行で、先行きの見えない生活を迫られる中、多くの人が「眠ることができない」「起きられない」といった睡眠への課題を口にした。過去にこれほどまで、国民の睡眠リズムの乱れが起きた時代はなかったのではないだろうか。
今回は、そんなコロナ禍においても、睡眠をコントロールすべく日常から取り組んでいるJリーガー・西山駿太選手(J3・Y.S.C.C.横浜所属)を紹介する。前編では、不足した能力を補う上で、コンディショニングに取り組むことの重要性を聞いた。後編では、コンディショニングの中でも重要な部分を占める、睡眠について、話を深掘りした。すると、西山選手は睡眠をコントロールするために行なっているルーティンがあることがわかった。
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そこまで細部にこだわっているのですね。西山選手にとって、普段のコンディション調整で苦労している部分はどこですか?
僕の場合は仕事をしながらプレーしています。金曜日は仕事があるため、土曜日に当日移動を伴うアウェイゲームがあるときは、心身ともにキツイですね。特に、近隣の相模原や沼津、藤枝での試合は、当日にバスで移動することになるので、どうしてもベストコンディションが作れないまま、試合に臨むことが多くなってしまいます。
これまでにない状況のなかで、西山選手がコンディションを上げていくために行っている工夫はありますか?
まずは練習を毎日100%で挑むということを目標に置いているので、必ず練習の2時間前には練習会場に入っています。シャワーを浴びるところから始めて、練習の前後にはセルフケアを行なっています。あとは入浴後にストレッチを行うなど、ほとんどのサッカー選手と同じことをしています。ただ僕の場合は、とにかく毎日それを徹底的に継続するという意識を持ってやっていますね。
仕事との両立をしながら、パフォーマンスを上げるためにも、コンディショニングの面では、普段から緻密な工夫が必要になりそうですね。
はい、例えば、お風呂に浸かり、その後に冷たいシャワーで体を冷やすサイクルを繰り返す「交代浴」を自宅でも行っています。あとは、就寝前にストレッチを必ず行うようにしていますね。あるとき、ストレッチをやった日とやらなかった日で、翌朝に起きた時の感覚が違うということに気がついたんです。それ以来、ストレッチもしっかりと取り組むようになりました。
良い睡眠のためには、就寝の1時間半ほど前までに入浴を済ませると良いと言われていますが、ストレッチをしていると、それくらいの時間はすぐに経ってしまうので、毎晩、良い感じで睡眠に入れていると思います。
あとは、テレビの情報番組で、内臓への負担を考えると「心臓を上にして横向きに寝るといい」と言っていたので、ここ数ヶ月は右向きで寝ています。あとは抱き枕を足に挟んで寝ていますね。
睡眠に対しても強いこだわりが感じられますね。西山選手にとって、睡眠における課題は何かありますか?
入浴やストレッチなどのルーティンはしっかりとこなしたいので、日によっては、睡眠時間が減ってしまうことがあるのが課題です。だからこそ、睡眠の質の向上をもっと意識していかないといけないと思っています。
特に、いびきは、普段からかいていると思います。以前、チームメイトから言われたこともありますし、スマートフォンのアプリで調べてみたら、やはりいびきをかいていました。
睡眠は、「一番大切なものだけど、ついつい削ってしまうもの」なのかなと思います。お金を節約しようとすると、食費を削ったり、余暇を削ったりするように、1日の時間が足りないと、どうしても睡眠を削ってしまいます。一番大切にしているものなのに、一番に削ってしまうものであるということに、自分自身、すごく矛盾を感じています。
睡眠はコントロールできないイメージが強いから優先順位が落ちてしまうのでしょうか?
そうですね。自分の中で「最低限の睡眠時間は確保出来ているからいいや」とか、「ストレッチをして寝ているからいいや」というちょっとした「甘え」がきっと根底にあるのでしょう。
西山選手は、現在31歳ということですが、まだまだ成長の余地が残されているようですね。この先の西山選手の目標を聞かせてください。
まだまだ上手くなりたいですし、もっと長く現役を続けていきたいという思いが強いです。今回取材していただいたことをきっかけにして、睡眠の質や量について、もう一度見つめ直し、さらに成長した姿を見てもらえたら嬉しいです。今回は、本当に素晴らしい機会をどうもありがとうございました。
取材・文・写真:瀬川泰祐(編集者・スポーツライター)
試合中写真 : 本人提供
瀬川泰祐プロフィール
株式会社カタル代表取締役。社会派のスポーツライターとして、東洋経済オンライン、ITメディア、OCEANS、スポルディーバなどで執筆中。アスリートライブ編集長、ファルカオフットボールクラブアドバイザー。最近の取材テーマは「Beyond Sports」。社会の接点からスポーツの価値を探る。興行ビジネス歴20年。http://segawa.kataru.jp
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